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(令和5年6月22日)令和4年度における九州地区の独占禁止法の運用状況等について

(令和5年6月22日)令和4年度における九州地区の独占禁止法の運用状況等について

令和5年6月22日
公正取引委員会事務総局
九州事務所

第1 独占禁止法違反事件等の処理状況

1 独占禁止法違反事件等の処理状況

 公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。また、IT・デジタル関連分野や農業・漁業分野における独占禁止法違反被疑行為など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいる。
 そして、公正取引委員会は、一般から提供された情報(申告)、自ら探知した事実等を検討し、必要な審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、違反行為をした事業者等に対し、違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち、価格カルテル・入札談合・受注調整、優越的地位の濫用等については、違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。また、違反被疑行為について公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認められるときは、確約手続を適用し、事業者と協調的な問題解決を図っている。

2 最近の独占禁止法違反事件等の処理状況(不当廉売事案で迅速処理したもの及び優越的地位の濫用事案で注意したものを除く。) 

 最近の5年間における九州地区の独占禁止法違反事件等の処理状況は、次のとおりである。

独占禁止法違反事件等の処理件数(単位:件)

処理内容/年度

平成30
年度

令和元
年度

令和2
年度

令和3
年度
令和4
年度
審査件数
前年度からの繰越し
1
2
0
0
4
年度内新規着手
5
5
4
8
9
合計
6
7
4
8
13
処理件数

法的措置
(注1)

排除措置命令等

0 0 0 0 3

その他

警告(注2)

0
0
0 0

注意(注3)

2
5
4
4
6

打切り(注4)

2
2
0 0

小計

4
7
4
4
6

合計

4
7

4

4
9
次年度への繰越し
2
0
0
4
4

(注1)「法的措置」とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共になされている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは、排除措置命令を採るに足る証拠が得られないが、違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは、違反行為が認められない等により、審査を打ち切る場合をいう。

3 独占禁止法違反事件等の概要

(1) 市場分割カルテル

 九州電力株式会社、九電みらいエナジー株式会社及び関西電力株式会社が、互いに、相手方の供給区域において順次実施される官公庁入札等で安値による電気料金の提示を制限することを合意していた。
(令和5年3月30日 排除措置命令及び課徴金納付命令)
(課徴金額:27億6223万円)

(2) 入札談合

 独立行政法人国立病院機構発注の九州エリアに所在する病院が調達する医薬品の入札参加業者らが、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
(令和5年3月24日 排除措置命令及び課徴金納付命令)

(課徴金額:6億2728万円)

(3) 再販売価格の拘束

 株式会社一蘭は、同社が販売する即席めん等(以下「一蘭の即席めん等」という。)に関し、自ら又は取引先卸売業者を通じて小売業者に販売しているところ、遅くとも平成30年1月以降、一蘭の即席めん等の商品ごとに希望小売価格を定めた上で(以下当該商品ごとに定められた希望小売価格を「一蘭の希望小売価格」という。)、当該商品が小売業者において販売される態様(同一の商品を複数まとめる場合又は異なる商品を組み合わせる場合を含む。)にかかわらず

ア  当該商品の購入を希望する小売業者に対し、一蘭の希望小売価格から割引した価格による販売を行わないよう要請し、これに同意した小売業者に
イ  取引先卸売業者をしてその取引先である当該商品の購入を希望する小売業者に一蘭の希望小売価格から割引した価格による販売を行わないよう要請させ、これに同意した小売業者への販売を行うことになる当該取引先卸売業者に

当該商品をそれぞれ供給している。
(令和4年5月19日 確約計画の認定)

  

(4)優越的地位の濫用

  公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には、未然防止の観点から注意するほか、独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
 令和4年度においては、九州地区で8件の注意を行ったところ、その主な事例は以下のとおりである(注)。
(注) 次の各事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。

ア スーパーマーケットAは、納入業者に対し、営業部門の担当者から、納入業者との取引に関係のないワイン及びクリスマスケーキの購入を要請していた。
イ 食料品等卸売業者Bは、納入業者に対し、自社の利益を確保するための費用をキャンペーンの協賛金と称して、事前に算出根拠や使途等を説明することなく金銭の負担を要請していた。
ウ 農業協同組合Cは、運送業務を委託する物流事業者に対し、物流事業者の責に帰すべき理由がないにもかかわらず、支払代金に一定の割合を乗じて算定した額を、あらかじめ定めた支払代金から減額して支払っていた。

(5) 不当廉売

 不当廉売は、総販売原価を著しく下回る価格で継続して販売するほか、不当に低い価格で販売することにより、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれのある行為であり、独占禁止法第19条で禁止されるものである。申告のあった小売業に係る不当廉売事案については、迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売事業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売事業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
 令和4年度においては、迅速に処理するとの上記方針の下、酒類及び石油製品の小売業について、不当廉売につながるおそれがあるとして九州地区で5件の注意を行った。

 このほか、酒類の製造業者に対して、不当廉売につながるおそれがあるとして1件の注意を行った。

(6) その他

 次の各事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったため、注意を行った。


ア  農業協同組合Dの組合員を部会員とする団体Eは、部会員に対し、部会員が生産する農産物の全量をDに出荷することをEの規約において義務付けていた。(事業者団体による取引先の制限)
イ  輸送業者を組合員とする協同組合Fは、新規参入を希望する事業者に対し、既存の組合員からの同意を得るよう要請していた。(事業者団体による参入制限)

ウ 集荷業者を組合員とする協同組合Gは、組合員がG以外に集荷物を出荷した場合、「非委託分事務手数料」と称する金銭を徴収していた。(拘束条件付取引、競争者に対する取引妨害)
 

第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況

1 企業結合関係届出

 独占禁止法では第4章において、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。

 公正取引委員会は、これらの規定に従い、企業結合審査を行っている。
 最近5年間における九州地区の企業結合関係届出の状況は、次のとおりである。

企業結合関係届出受理件数(単位:件)
 
平成30
年度

令和元
年度

令和2
年度

令和3
年度
令和4
年度
株式取得届出受理
3
3
2
4
2
合併届出受理
0
0 0 0
分割届出受理
0
0 0 1
共同株式移転届出受理
0
0 0 0
事業譲受け等届出受理
0
0 0 0
合計
3
3
2
5
2

2 協同組合届出

 中小企業等協同組合法は、同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し、同法第7条第1項第1号に規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには、その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
 最近5年間における九州地区の協同組合届出件数は、次のとおりである。

中小企業等協同組合法第7条第3項に基づく届出件数(単位:件)
平成30
年度

令和元
年度

令和2
年度

令和3
年度
令和4
年度
14
10 16
15
11

第3 広報・広聴活動

 公正取引委員会は、独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため、次のような広報・広聴活動を行っている。

1 独占禁止政策協力委員制度

 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため、独占禁止政策協力委員制度を設置しており、公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに、独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
 令和4年度においては、(1)公正取引委員会に対する期待、(2)地域経済の実情と競争政策上の課題、(3)中小企業の取引適正化/優越的地位の濫用規制・下請法の規制、(4)経済のデジタル化の進展と競争政策の役割、(5)競争環境の整備に係る調査・提言などについての意見聴取をそれぞれ行った(注)。

(注)聴取した意見の概要は、他の地区のものと合わせて令和5年5月24日に公表されている。

2 有識者との懇談会

 各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広く意見及び要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、毎年、全国各地において有識者との懇談会を開催している。
 九州地区では、令和4年度は熊本市において、熊本商工会議所等の経済団体、消費者団体、報道機関、学識経験者と公正取引委員会委員との懇談会を実施し、同時に「公正取引委員会の役割と社会経済の変化に対応した競争政策」をテーマに講演会を開催した。
 このほか、九州事務所長等と各地の有識者との懇談会を開催しており、令和4年度は福岡市(2か所)、福岡県行橋市、同県大川市、同県大牟田市、佐賀県武雄市、長崎市、長崎県島原市、同県大村市、同県平戸市(2か所)、熊本市、鹿児島県鹿屋市、同県出水郡長島町、及び同県大島郡瀬戸内町の計15か所において開催したほか、関係行政機関からの要請を受け、価格転嫁の取組等を説明するとともに参加者との間で意見交換を行った(6か所)。また、福岡県において弁護士会との懇談会を開催した。

3 独占禁止法説明会等

 公正取引委員会は、独占禁止法等の違反行為の未然防止を図るため、説明会・講習会等を自ら主催しているほか、各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、ウェブ会議による説明会等も実施した。
 九州地区では、令和4年度は独占禁止法に関する説明会等を10回実施した。また、入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を34回実施したほか、インボイス制度への対応に係る独占禁止法等において問題となり得る行為についての説明会を10回実施した。

4 独占禁止法教室(出前授業)

 将来を担う中学生、高校生、大学生等を対象に、市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし、競争の必要性・重要性、独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として、公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、ウェブ会議による開催や公正取引委員会の職員による講義の様子をあらかじめ収録した動画の配信も行った。
 九州地区では、令和4年度は中学生向け独占禁止法教室を7回、高校生向け独占禁止法教室を4回、大学生向け独占禁止法教室を11回それぞれ開催した。

5 消費者セミナー

 一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層理解を深めてもらうことを目的として、地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか、公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に派遣している。令和4年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、ウェブ会議による消費者セミナーも実施した。
 九州地区では、令和4年度は北九州市、福岡県大川市、長崎市、長崎県五島市、宮崎県延岡市及び鹿児島県奄美市の計6か所において、消費者セミナーを開催した。

6 一日公正取引委員会

 本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において、独占禁止法及び下請法の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため、独占禁止法講演会、下請法基礎講習会、入札談合等関与行為防止法研修会、消費者セミナー、独占禁止法教室、報道機関との懇談会、相談・展示コーナーなどを1か所の会場で開催する「一日公正取引委員会」を開催している。
 九州地区では、令和4年度は長崎市において、令和5年2月2日に一日公正取引委員会を開催した。

7 相談業務

 公正取引委員会は、法運用に対する理解を深め、違反行為の未然防止を図るため、相談を受け付けている。
 最近5年間における九州地区の相談受付件数は次のとおりである。

相談受付件数(単位:件)
 

平成30
年度

令和元
年度

令和2
年度

令和3
年度
令和4
年度

独占
禁止法

275
340
356
240
344

下請法

230
284
217
284
378

合計

505
624
573
524
722

関連ファイル

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。(印刷用)(令和5年6月22日)令和4年度における九州地区の独占禁止法の運用状況等についてpdfダウンロード(192 KB)

 第1に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局九州事務所第一審査課
              電話 092-431-6033(直通)

第2に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局九州事務所経済取引指導官
             電話 092-431-5882(直通)

第3に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局九州事務所総務課
             電話 092-431-5881(直通)

ホ-ムペ-ジ https://www.jftc.go.jp/regional_office/kyusyu/

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