SH4506 水平的協定に関する一括適用免除規則と指針の採択 亀岡悦子(2023/06/21)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

水平的協定に関する一括適用免除規則と指針の採択

Atsumi & Sakai Europa

弁護士(ニューヨーク州弁護士会会員、ブリュッセル弁護士会準会員)
亀 岡 悦 子

 

 今年6月1日に、欧州委は、研究開発に関する一括適用免除規則および専門化協定に関する一括適用免除規則を採択した。これらのEU規則は今年7月1日から今後12年間有効となる。同時に、規則の解釈についてガイダンスを提供する、水平的協定に関する指針も採択された。規則との同時改正などを理由として、指針の適用開始は延長されていたが、7月に予定されている官報での公示後、やっと有効になる。

 企業間の水平的協力協定は、生産、流通販売レベルで競業する企業及び将来競合となるうる事業者間の取決めを対象とする。競業する日本企業間の協力、日本企業が競業欧州企業とアライアンスを組んだり、コンソーシアムにより欧州事業を行う場合にも適用されうる。共同購入契約、ジョイントマーケティング活動、共同研究開発、競業者間の規格設定などがその例である。このような事業者間協力は、消費者利益、環境保護の促進などの効率性を生じ得る一方、カルテルのリスクも生じる。そのため、欧州委は上記の一括適用免除規則ならびに水平的協定に関する指針を採択し、一定の取決めは、競争法上、問題がないことを明らかにしてきた。多くの企業は、競業企業との交渉・契約作成の際に規則と指針を参考にしており、欧州委はその有用性を認めている。そのため、さらに内容を充実させ、デジタル化、グリーン社会への移行などを考慮に入れて旧規則と指針を改正した。以下、改正内容の概略を紹介する。

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(かめおか・えつこ)

弁護士(米国ニューヨーク州弁護士会会員、ベルギー王国ブリュッセル弁護士会準会員)。
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、同大学法学研究科修士課程終了。同博士課程在籍中、パリ・ルボンヌ大学修士課程にてEU競争法を研究し、ニューヨーク大学ロースクールで法学修士号LL.M.を取得。欧州委員会競争総局で修習後、欧州大学院(ブルージュ)でEU競争法手続の研究。EU競争法における秘匿特権の研究で、ブラッセル自由大学から法学博士号を取得。フランス系、英国系法律事務所を経て、2001年からEU競争法弁護士としてブラッセルのバンバール・アンド・ベリス法律事務所に勤務。2022年、ジェラディン・パートナーズにてテクノロジー分野のEU競争法実務に携わった後、2023年から、渥美坂井法律事務所・欧州オフィスAtsumi & Sakai Europaパートナー。カルテル・支配的地位濫用審査での欧州委審査対応、企業結合届出、流通販売制度の設立、R&D・アライアンスなどの契約書の作成・見直し、知財ライセンス交渉、海外直接投資規制、外国補助金規制などEU競争法の全ての分野を扱い、コンプライアンスプログラムの作成やトレーニング、競争法違反に基づく損害賠償請求訴訟についても豊富な経験を有する。EU競争法の講演や著作も多い。

 

連絡先:渥美坂井法律事務所 フランクフルト提携事務所
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    OpernTurm (13th Floor) Bockenheimer Landstraße 2-4 60306 
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Email : etsuko.kameoka@aplaw.de

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