事務局長談話

 
2021年06月03日
育児・介護休業法等改正法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.仕事と育児等の両立に向けて一歩前進
 6月3日、衆議院本会議において育児・介護休業法等改正法案が、全会一致で可決・成立した。育児休業の分割取得化、妊娠・出産の申出を行った労働者に対する制度の周知と休業取得意向の確認の義務付け等は、一歩前進といえる。また、有期契約労働者の育児・介護休業の取得要件のうち「引き続き雇用された期間が1年以上」の撤廃は評価できるが、もう一つの要件である「子が1歳6ヵ月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないこと」が残っていることは引き続きの課題である。

2.新制度の「出生時育児休業」中の就労には懸念
 改正法により、主に男性を対象に、子の出生後8週間以内に4週間まで休業できる「出生時育児休業」が創設される。女性に比べて休業取得が著しく進んでいない男性にとって選択肢の一つとなり、男性の育児参加によってパートナーである女性の就労継続につながる可能性はある。しかし、新制度では労使協定の締結と本人同意が必要であるものの、男性のみ休業期間中の就労が認められることになる。本人の意思に反して就労を求められることはあってはならず、通常の育児休業やその他の休業・休暇制度に悪影響を及ぼさないことも重要である。

3.「子育て」に関する経済的支援の財源のあり方の議論を
 育児休業給付の財源でもある雇用保険特別会計は、失業給付など雇用のセーフティネットを担っている。現在、雇用保険会計は、コロナ禍において極めて厳しい財政状況にある一方で、育児休業給付は右肩上がりで増加している。そもそも「子育て」に関する経済的支援は、一般会計で予算措置したうえで、雇用保険の加入歴などにかかわりなく広く実施すべきであり、今後、そのための検討が必要となる。

4.ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて労使による職場環境の整備を
 育児休業の取得には職場の理解と協力も不可欠であり、労使による十分な話し合いや環境整備などが重要である。また、男性の育児休業取得日数は、「5日未満」が4割程度を占めている。取得率にのみ注目するのではなく、労働者の意向を十分に保障し、積極的に利用され、対象者が安心して希望する期間、取得できる制度でなければならない。連合は、今後の指針策定に向けた審議会における意見反映に努めるとともに、引き続き雇用形態や性別にかかわらず、だれもが仕事と育児・介護を両立できる社会の実現に向けて、雇用の安定と職場環境の整備をはじめとした取り組みを進めていく。

以 上